STEAM教育とは概要から歴史を文部科学省・経済省産業省の発信内容と共に解説

2022年12月19日

近年、日本の教育現場において「STEAM教育」に注目が集まっています。このSTEAM教育とは何なのか、なぜ注目が集まるようになったのかを、文部科学省・経済産業省が発信している内容とともに、詳しく解説していきます。

「STEAM」の由来

STEAM教育について触れる前に、まずは「STEAM」という言葉の意味について見ていきましょう。

STEAMは「スチーム(スティーム)」と読み、S=Science(科学)、T=Technology(技術)、E=Engineering(工学)、A=Arts(リベラルアーツ)、M=Mathematics(数学)という5つの言葉の頭文字を取ったものです。もともとは、ここからAを除いたSTEM(ステム)の4つの学問領域をまとめて教育に取り入れた「STEM教育」(1990年代にアメリカ国立科学財団が提唱)からスタートしています。

 

 STEMについては、日本STEM教育学会の新井健一会長が同ホームページにおいて「STEMの起源は1990年代の米国で、国際競争力を高めるための、科学技術人材の育成を目的とした教育政策として、注目されてきたと言われています」と述べています。

STEMは理系分野の学問領域に関するものが主体ですが、ここに芸術や文系分野の学問療育が主体となるAを加えたSTEAMを教育分野に導入したものがSTEAM教育です。

STEAM教育が注目されるようになった理由

 なぜ、このSTEAM教育が注目されるようになったのか。それは現代社会の変化に伴い、これからの人材に求められる能力も多様化しているからです。

科学技術の急速な進歩によって現代社会が激しく変化し、課題も多様になりつつある中で、文部科学省は文系・理系の枠にとらわれず情報を取り入れ、課題の発見や解決、社会的な価値の創造などができる力の育成が求められているとし、「STEMに加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でAを定義し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくため」に、STEAM教育をはじめとした教科横断的な学習を推し進めています。

文部科学省の資料「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について」では、STEAM教育は当初、STEM教育におもにデザイン分野の要素としてのArts(芸術)を加えたものとしてスタートしましたが、上記のように現代社会の問題に対応する力を身につけるために、Artsを「リベラルアーツ」ととらえ、美術、音楽、文学、歴史、経済など多岐にわたる学問領域をSTEM教育に取り入れるという考えを示しています。
(参考)STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進

STEAM教育の歴史

アメリカのバラク・オバマ大統領時代(2009~16年)に、オバマ大統領自身がSTEM教育の重要性について発信したこと(https://youtu.be/6XvmhE1J9PY)からもわかるように、欧米では日本に先駆けてSTEM教育、そして、そこにAを加えたSTEAM教育を推し進めてきました。

日本もその重要性を国が認識し、近年STEAM教育を教育現場に取り入れるための施策を採り始めています。

未来の教室ビジョンの柱としての「STEAM化」

文科省だけでなく経済産業省も、これからの日本社会を支える人材を育てるために「未来の教室ビジョン」を策定。その柱の1つとして、「学びのSTEAM化」を掲げています。

『未来の教室』とEdTech研究会STEAM検討ワーキンググループ中間報告」では、STEAMは「課題発見から課題解決まで、協働にも重きを置く、教科横断的な探究学習の意味で使われることが多い」とし、「工業化社会・大衆消費社会から、知識産業社会・Society 5.0(※1)への変革期」であるこれからの世界を生きていく子どもたちに必要な学びの姿勢を育むものであると定義しています。

また、経済産業省の「未来の教室ビジョン」と、文部科学省の「新学習指導要領」は、言葉づかいこそ違うものの、改革の方向性は同じだと述べています。

 文言は異なっていても、社会課題がますます多様化し、これまでとは違う発想や解決方法がより一層求められるようになる中で、そうした社会に対応できる力を子どもたちが身につけるためには、日ごろの学習から文系・理系の枠を越え、教科横断的に学んでいくことが必要だという考えは共通です。また、そのためにSTEAM教育が欠かせないという点でも両省の施策は同じ方向を向いていると言っていいでしょう。

 

 ※1:Society 5.0:狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続き、日本がめざすべき未来社会の姿として日本政府が「第5期科学技術基本計画」で提唱した、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のこと。

STEAM教育実践例を探したいときには

すでにSTEAM教育はさまざまな形で、教育現場で実践されています。

未来の教室ビジョンの施策の1つとして公開されている「STEAM Library」ではSTEAM教育のテーマや教材、実践例などが多数紹介されています。

テーマは文系・理系、主要5教科、実技系教科が入り混じり、対象も小学生から高校生まで多種多様な内容が用意されており、まさに子供達「一人ひとりのワクワクを探究するためのオンライン図書館」(同ホームページより)となっています。先生のための「授業ガイド」となる資料も豊富に掲載されています。 

まとめ

日本では、これまでは教科ごと、単元ごと、学年ごとなど、決まった形で学ぶことが基本でしたが、それだけでは学び切れない・伸ばし切れない力があるということが日本の教育界で共有されてきたことで、STEAM教育をはじめとした教科横断的な教育手法が広まりつつあります。

 今後、さらにSTEAM教育についても研究が進み、新たな考え方や教育手法が誕生していくことでしょう。

この記事のタグ
同じカテゴリの人気記事
一覧へ戻る